溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

珍しい顔ぶれの優花を見て、誰もが気さくに話しかけてくれ、十年の空白の時間どころか、関係の希薄だった高校時代の三年間までも一気に埋められていく気がした。

みんなと話している隙を縫って片瀬を目で追うが、当時からの人気者だけあって、次から次へと友人たちに捕まっている。そして、そんな大勢の中であっても、堂々とした立ち居振る舞いの片瀬は飛び抜けて目立っていた。

(私には手の届かない人だよね……)

女子たち囲まれる片瀬を遠巻きに見ながら、亜衣たちにひと言断って輪から離れる。会場の外の空気を吸いに行きたかった。

通路に出てドアを閉めると、喧騒が途端に消える。亜衣たちと話すのは楽しいが、静かな空気はやはりホッとする。

そろそろお開きの時間だろう。腕時計を見てみれば、午後七時半を回っていた。

(片瀬くんはきっとみんなと二次会へ行くよね)

亜衣たちにひと声かけてから帰ろうと、優花が会場へ戻ろうとすると、そこへ滝口が現れた。


「宮岡さんも二次会行くだろ?」
「あ、ううん。私はこれで……」


優花が首を横に振る。
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