溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「……え? どういうこと?」
今まで会場内でまったく接触のなかった片瀬が、突然優花をさらおうとしているのだ。わけがわからず、滝口が戸惑うのも無理はないだろう。
それは優花も同様で、片瀬の行動になにも口を挟めずにキョトンとしてしまう。
「こういうこと」
そう言うなり、片瀬は優花の髪に口づけた。
これに驚いたのは優花の方だった。花いかだのオーベルジュで迎えた朝以降、いっさい優花に触れることのなかった片瀬の突然のキスだったから。
「え? なに? ふたりってそういうことだったのか……?」
呆然自失の滝口に「そういうことなんだ」と爽やかに笑いかけたかと思えば、片瀬は優花の腰に手を添え、エレベーターに向かって歩き始めた。
それと同時に会場の扉が開き、大勢の同級生たちが出てくる。賑やかな声を背中で聞きながら、優花たちはエレベーターへ乗り込んだ。
滝口に挨拶もできずじまいだった。