溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
扉が閉まり、遮断されたざわめきにより空気が一気に静まる。今頃になって優花の鼓動がスピードを上げてきた。
髪に不意打ちでされたキスの衝撃が、遅れてやってきたのだ。
「ごめん」
出し抜けに片瀬に謝罪され、なにに対するものなのかわからず困惑する。
さっきのキスのことなのか。それとも滝口から引き離したことなのか。
「俺がいるから行こうって誘っておいて、会場で全然話せなかったから」
「そのことなら気にしないで。みんな、片瀬くんと話したいだろうから」
片瀬が同級生たちに囲まれる状況は、優花の予想していた通り。そのことを責める気はまったくない。
「何度か優花のところに行こうとしてたんだけどね」
「本当に大丈夫だから。それと……」
「それと?」
言いかけて言葉を止めた優花の顔を片瀬が横から覗き込む。