溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「この前の夜のことなんだけど……」


思いきって切りだした。なかなかきっかけをつかめずにいたが、あのときのことをきちんと話しておきたかった。

片瀬の顔がふと強張る。


「片瀬くんは気にしないでね」


優花はずっとそのひと言を伝えたかったのだ。あの夜、優花を拒んだ形になったことを片瀬はきっと気にしているから。


「私は全然へっちゃらだから」


自分でそう言うくせに、胸の奥がきゅうっと縮まる。


「私に気を遣うことはないよ。片瀬くんの会社に守谷会計事務所を使うことに決めたのも、悪いことをしたって思ってるからでしょう? さっき滝口くんから私を引き離したのも、私が困っているから助けてくれただけで。わかってるから、もう大丈夫だよ。本当に気にしないで」


言えずにいたことを口にでき、少しだけ肩が軽くなった気がする。
< 105 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop