溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「この前の夜のことなんだけど……」
思いきって切りだした。なかなかきっかけをつかめずにいたが、あのときのことをきちんと話しておきたかった。
片瀬の顔がふと強張る。
「片瀬くんは気にしないでね」
優花はずっとそのひと言を伝えたかったのだ。あの夜、優花を拒んだ形になったことを片瀬はきっと気にしているから。
「私は全然へっちゃらだから」
自分でそう言うくせに、胸の奥がきゅうっと縮まる。
「私に気を遣うことはないよ。片瀬くんの会社に守谷会計事務所を使うことに決めたのも、悪いことをしたって思ってるからでしょう? さっき滝口くんから私を引き離したのも、私が困っているから助けてくれただけで。わかってるから、もう大丈夫だよ。本当に気にしないで」
言えずにいたことを口にでき、少しだけ肩が軽くなった気がする。