溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「もうちょっとだけお世話になっちゃうけど、今ね、部屋も探してるの。だから――」
「違うんだ」
片瀬が強い口調で遮った。切なくなるような眼差しで、痛いほどに優花を見つめる。
その視線に触発され、優花の心拍が徐々に速まっていく。
「優花、俺は」
片瀬がなにかを言いかけたとき、エレベーターが一階へ到着する。開いた扉の向こうにブロンドの女性がふたり立っていた。
降りないの?という視線をふたりに向ける。
「……降りよう」
片瀬は小さく息をつき、優花の肩を引き寄せた。
その後、言いかけた言葉を飲み込んだまま、片瀬は乗り込んだ車の中でもだんまり。
優花からさっきの話の続きを聞き直すこともできないまま、マンションに到着した。
ダイニングテーブルには、優花が広げたテキストがそのままになっている。