溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
あれから片瀬は、気難しそうに眉根を寄せたままだ。
(私がなにか気に障ることを言っちゃったのかな……)
そう考えるものの、心当たりはなく、その原因を突き止める術もない。
せめて重い空気を払拭したくて、気を取り直して「コーヒーでも淹れるね」と優花がテーブルにバッグを置くと、片瀬はその手を不意に掴んだ。
優花の鼓動がドキンと弾む。
「優花」
悩ましさの滲んだ目が揺らしながら、片瀬は握った手に力を込めた。
「守谷会計事務所と契約をしたのは、優花の言う通り。でも……さっきのはそうじゃない」
(……さっきの? そうじゃ、ない?)
なんのことを指しているのかわからず、優花は片瀬の次の言葉を待つ。
「本当のことを言わせて」