溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
なにしろ優花はバラ一輪。母の言っていた様子からしても、相手も一輪だろう。あんなにたくさん抱える必要はない。
(違うよね。たまたまバラが被っただけだろうな)
そんなことを考えながら男性のことを眺めていると、案内されて歩く彼はなぜか優花の方へ来るではないか。スタッフの目線まで、真っすぐ優花に向いている。
(……え、嘘でしょ)
目を瞬かせる優花の元へたどり着くと、スタッフがスマートな仕草で「こちらでございます」と男性に手で指した。
「あ、あの……宮岡優花です……」
おずおずと立ち上がったところで、優花は相手の名前を聞きそびれていたことを思い出した。急なセッティングだったのと、片瀬との別れで頭の切り替えができていなかったせいもあるのかもしれない。
「待たせてごめん」
「……え?」
その声を聞いた優花は、自分の耳がおかしくなったのではないかと疑いたくなった。片瀬の声にそっくりだったのだ。