溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
それは成長していないという意味なのだろうか。
だとしたら、ちょっと残念だ。
「文化祭や体育祭の後片づけなんかも、ひとりで黙々とやっていたよね」
「……そうだった、かな?」
「ハイテンションになったみんながふざけながら適当に片づけている中、優花だけは静かに慎ましく」
「みんなの輪に入っていくのができなかっただけだよ」
どうしたらワイワイ楽しく騒げるのか、優花はわからなかったのだ。だから、ひたすら片づけに徹した。
「みんなと違った大人の雰囲気で、優花に憧れる男子もいたんだよ」
「えっ、やだ。冗談はやめて」
片瀬が突拍子もないことを言うものだから、動揺した優花は手もとが狂ってグラスを倒してしまった。幸いにも空だったため、テーブルを汚すことはなかったが。
「大丈夫?」
向かいから片瀬が楽しげに笑う。