溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「もうっ、片瀬くんが変なことを言うからだよ」
「いや、真実だから」
「そういう片瀬くんこそ、いつも女子のあこがれの的だったでしょ」


自分の話題から遠ざかろうと、優花が片瀬を引き合いに出す。いつもより唇が滑らかなせいもあるだろう。普段だったら顔を赤くして押し黙って終わりだ。

あの頃の片瀬には、常に女子の視線が集まっていた。十年が経ち、数段魅力の増した片瀬は、今でもきっとそうなのだろう。
街で再会したときにも、道を行く女性たちがこぞって見惚れていたことを思い返す。


「それは昔の話。今はぜーんぜんだよ。モテるのは肩書きだけ」


確かに社長の肩書きは魅力だろうが、それだけということはないだろう。物腰は柔らかいし、紳士的。女性は放っておかないはず。


「そんなことはないでしょ。私なんて、親が心配してお見合いをしろって言ってくるくらいなんだから」
「お見合い? この歳で?」
「私が結婚できないんじゃないかって心配みたいで」
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