溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
優花が壁際に所在なく立っていると、「もしかして、宮岡さん?」と声をかけてきた小柄の女性がいた。
小さく頷きながら、誰だろうと高校時代の記憶を探る。
肩までの栗色の髪に、くりくりとした大きな猫目。この人は……。
「小野よ、小野亜衣(おの あい)」
「……あぁ! 小野さん!」
クラスの学級委員長を務めていた生徒だった。
いつもひとりでいる優花に声を掛けてきた、唯一のクラスメイトといってもいいだろう。
二年生の修学旅行のときに、どこの班にも入れずに困っていた優花を同じグループに入れてくれたことがある。
「同窓会に来るのは初めてじゃない?」
「うん。仕事の都合がなかなかつかなくて……」
来ても話す人がいないからと正直には言えない。変なところでプライドが邪魔する。
「でも、宮岡さんは相変わらず綺麗だなぁ。ううん、ますます磨きがかかったって言ってもいいかな」
「えっ、そんなことは……」