溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
どれがいい?と気遣ってくれる亜衣の優しい横顔をついじっと見つめていると、
「ん? なにどうしたの?」
亜衣が目を瞬かせて小首を傾げる。
「あ、ううん。えっと、それじゃ……ジンジャーエールで」
「はい、どうぞ」
細かい気泡が浮かぶグラスを手に取った亜衣は、それを優花に渡してくれた。
亜衣が主導権を握ってくれるおかげで、その後の会話が思った以上に弾む。〝優花〟と〝亜衣〟と名前で呼び合うようになるまで、それほどの時間はかからなかった。
どうしてこんなことが高校生のときにできなかったのだろうかと、自分でも不思議でならない。
連絡先を交換しようということになったが、片瀬にいきなり連れ出されてしまったため、優花はスマートフォンを持っていない。
「慌てて出てきたから忘れてきちゃった……」