溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「あららー、滝口くん、すっかり忘れられてるね。ご愁傷様」
亜衣が茶化して笑う。
「ちょっ、お前、うるせーよ。宮岡さん、マジでわかんない? 滝口だよ、滝口聡」
名前を聞いてもピンとこないということは、同じクラスではなかったのだろうか。クラスメイトですら顔があやふやなのだ。クラスが違ったらさっぱりわからない。
優花が微笑みつつ困っていると、滝口はガッガリして肩を落とす。
「同じクラスだったんだけどな。宮岡さんとはよく席も隣になったりしたし」
「えっ、そうなの? ごめんなさい。私、あまり周りをよく見てなかったから」
まさか席まで隣だったことがあるとは。それなのに顔すら覚えていないなんて、あまりにもひどすぎやしないか。
自分の記憶力と観察力のなさに呆れる。申し訳なさに優花が身体を小さくしていると、亜衣は「優花が謝ることはないのよ」とフォローしてくれた。