Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
莉子はきちんと左右の手を連動して動かして、皮を薄く、均等の幅で剥いていた。もちろんジャガイモはきちんと丸みを保っている。不慣れだったりセンスがないとこうはいかない。
「一応、母の手伝いはしていました」
褒められて頬が熱くなったが、今は隠すこともできない。
「あのチーズケーキも母のレシピで」
「へえ」
藤堂は沸いた鍋から昆布を引き上げながら頷く。
「いつかケーキ以外の君の料理も食べてみたいもんだな」
「──え」
何気なく言われた言葉に、莉子の心臓は跳ね上がる。まるでプロポーズのようだと……。
「得意料理は?」
藤堂はそんな事は気も付かずに、僅かに違う話題に変えた。
「え……あの……だからと言って、そんなに作っている訳では……」
端的に言えば、得意料理はカレールーを使ったカレー、であろうか。
「そっかそっか。あ、じゃあ、ここに鰹節を入れてください」
笑って藤堂は自分の家から持ってきた、使いかけの花鰹の袋を差し出す。
莉子は手を拭ってそれを受け取る、一掴みね、と言われて従った。
湯気に削り節が揺れて、ゆっくり沈んでいく様を見た。
「……出汁から取るんですね」
少し驚いて聞いていた、フレンチシェフなのにきちんと和風なのだ、と思う。
「世界各国の料理は全て出汁が基本です、出汁をわざわざ取らない料理だって、素材から出汁は出てるでしょ、それを知ってるから塩だけで味付けとかするんですよ」
「……ああ、なるほど……」
「フランス料理だって、ブイヨンやフォンドボー、フュメ・ド・ポワソンなんかもあるね」
「ひゅ……?」
「フュメ・ド・ポワソン。ポワソンは魚の事」
「ああ、魚からも出汁をとるんだ……さすが食の都」
「聞いた話だけど、ヨーロッパは狩猟民族でしょ。野生の動物を狩ってきて食べるのに、いかに美味しく食べるかに重点を置いて発展したようだよ」
「野生動物……でも、それって日本もかつてはそうだったのでは……」
「鹿やカモならともかく、食べるところが少ない蛙なんかも食べるからね。臭みを消す為にブーケガルニを使ったり、ソースを工夫して美味しく食べられるようにしたんだってさ」
「蛙……藤堂さんのお店でも、出したりするんですか?」
「さすがに蛙は出さないよ、お客様に頼まれて用意したことはあるけど」
「作れるんですね……」
「うん、しばらくフランスに修行に行ってたからね」
「わあ……フランスかあ……」
国内旅行も修学旅行くらいしか記憶にない莉子は、海外など夢のまた夢だ。
「俺は高校も調理科のある学校選んでね。卒業したらすぐにフランスに行ってた。親は普通科の大学にでも進んでほしかったみたいだけど、俺は料理人になりたかったから」
「一応、母の手伝いはしていました」
褒められて頬が熱くなったが、今は隠すこともできない。
「あのチーズケーキも母のレシピで」
「へえ」
藤堂は沸いた鍋から昆布を引き上げながら頷く。
「いつかケーキ以外の君の料理も食べてみたいもんだな」
「──え」
何気なく言われた言葉に、莉子の心臓は跳ね上がる。まるでプロポーズのようだと……。
「得意料理は?」
藤堂はそんな事は気も付かずに、僅かに違う話題に変えた。
「え……あの……だからと言って、そんなに作っている訳では……」
端的に言えば、得意料理はカレールーを使ったカレー、であろうか。
「そっかそっか。あ、じゃあ、ここに鰹節を入れてください」
笑って藤堂は自分の家から持ってきた、使いかけの花鰹の袋を差し出す。
莉子は手を拭ってそれを受け取る、一掴みね、と言われて従った。
湯気に削り節が揺れて、ゆっくり沈んでいく様を見た。
「……出汁から取るんですね」
少し驚いて聞いていた、フレンチシェフなのにきちんと和風なのだ、と思う。
「世界各国の料理は全て出汁が基本です、出汁をわざわざ取らない料理だって、素材から出汁は出てるでしょ、それを知ってるから塩だけで味付けとかするんですよ」
「……ああ、なるほど……」
「フランス料理だって、ブイヨンやフォンドボー、フュメ・ド・ポワソンなんかもあるね」
「ひゅ……?」
「フュメ・ド・ポワソン。ポワソンは魚の事」
「ああ、魚からも出汁をとるんだ……さすが食の都」
「聞いた話だけど、ヨーロッパは狩猟民族でしょ。野生の動物を狩ってきて食べるのに、いかに美味しく食べるかに重点を置いて発展したようだよ」
「野生動物……でも、それって日本もかつてはそうだったのでは……」
「鹿やカモならともかく、食べるところが少ない蛙なんかも食べるからね。臭みを消す為にブーケガルニを使ったり、ソースを工夫して美味しく食べられるようにしたんだってさ」
「蛙……藤堂さんのお店でも、出したりするんですか?」
「さすがに蛙は出さないよ、お客様に頼まれて用意したことはあるけど」
「作れるんですね……」
「うん、しばらくフランスに修行に行ってたからね」
「わあ……フランスかあ……」
国内旅行も修学旅行くらいしか記憶にない莉子は、海外など夢のまた夢だ。
「俺は高校も調理科のある学校選んでね。卒業したらすぐにフランスに行ってた。親は普通科の大学にでも進んでほしかったみたいだけど、俺は料理人になりたかったから」