Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
食事を終え店を出る、会計は未だ尊持ちだ。断ったのだが莉子が自らこの店に来るならいいが言われ、莉子はそうしたら来ないだろうな、と内心思った。そんな事は尊も承知で、だから奢ると言われてずっとそうなっている。
「じゃあ、明日、待ってるね」
尊が入口まで見送って言う。
「はい、判り……」
「あ」
尊は小さな声で言うと、莉子に手を伸ばした。 なにを、と思う莉子の耳近くの髪に触れた。
「──!?」
莉子はびくりと体を震わせる、店内には小さな悲鳴が起きた。
「ああ、ごめん、糸くず、見つけちゃった」
尊は笑顔で、指先でつまみ上げた長さ1センチほどの白い糸を見せる。
「──ああ、はい、ありがと、ございます……」
「いいえ。じゃあ明日ね」
笑顔で手を振る尊の顔は見れずに、莉子はぺこぺこと頭を下げながら店を出て階段を下りて行った。
その姿が見えなくなってから、尊は踵を返す。 店内を埋める客は八割は女性だ、殆どが尊の顔をチラチラと見ながら頭を寄せ合って囁き合っている、いやらしい笑みを浮かべている者もいた。
店員も、また。
「オーナーぁ……」
客から見えないエリアまでついて来たウェイターが、猫なで声を掛ける。
「いい加減、教えてくださいよー。あの子、何者ですかー?」
「何者って?」
尊は澄ましたまま前掛けをつける。
「またまたぁ、そんなはぐらかしナシですよっ! いい加減恋人だって紹介してくださいよ!」
「ふふん、恋人じゃないな」
尊は唇の端を吊り上げて言った。
「ええー? そうなんですかあ? 足繁く店に来て、毎日彼女がいる間は一緒に座ってだべって、帰る時はお見送りまでしちゃう子が、恋人じゃないんですかあ? お客さんも気にしちゃってますよぉ?」
「まだ、だよ」
尊は更に笑みを深める、ウェイターもにやりと笑った。
「じゃあ、明日、待ってるね」
尊が入口まで見送って言う。
「はい、判り……」
「あ」
尊は小さな声で言うと、莉子に手を伸ばした。 なにを、と思う莉子の耳近くの髪に触れた。
「──!?」
莉子はびくりと体を震わせる、店内には小さな悲鳴が起きた。
「ああ、ごめん、糸くず、見つけちゃった」
尊は笑顔で、指先でつまみ上げた長さ1センチほどの白い糸を見せる。
「──ああ、はい、ありがと、ございます……」
「いいえ。じゃあ明日ね」
笑顔で手を振る尊の顔は見れずに、莉子はぺこぺこと頭を下げながら店を出て階段を下りて行った。
その姿が見えなくなってから、尊は踵を返す。 店内を埋める客は八割は女性だ、殆どが尊の顔をチラチラと見ながら頭を寄せ合って囁き合っている、いやらしい笑みを浮かべている者もいた。
店員も、また。
「オーナーぁ……」
客から見えないエリアまでついて来たウェイターが、猫なで声を掛ける。
「いい加減、教えてくださいよー。あの子、何者ですかー?」
「何者って?」
尊は澄ましたまま前掛けをつける。
「またまたぁ、そんなはぐらかしナシですよっ! いい加減恋人だって紹介してくださいよ!」
「ふふん、恋人じゃないな」
尊は唇の端を吊り上げて言った。
「ええー? そうなんですかあ? 足繁く店に来て、毎日彼女がいる間は一緒に座ってだべって、帰る時はお見送りまでしちゃう子が、恋人じゃないんですかあ? お客さんも気にしちゃってますよぉ?」
「まだ、だよ」
尊は更に笑みを深める、ウェイターもにやりと笑った。