Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
***
再会は翌日の夜だった。
玄関のインターフォンが鳴って、香子だったら嫌だな、と思いながらモニターを見た。
見た瞬間、心が躍り出すのが判った。
昨日の男性だった、莉子は震える手でインターフォンの受話器を取る。
「はい」
声も震えていた。
『あの、藤堂と申します。済みません、昨日のお詫びに来ました』
心地よく響くテノールの声に、莉子は聞き入りそうになった。
「あ、いえ……勘違いなのは判りましたから、そんなお詫びなんて……」
『いえ、折角作ってきましたから、是非受け取ってください』
「……作る?」
『はい』
それ以上は会って話すとでも言いたげに、藤堂と名乗った男は手に持ったペール型の縦長の箱を持ち上げた。
いつもなら断っていただろう。
しかし莉子は大きな疑問も持たず……いや、もう一度くらい逢いたいと、玄関へ向かっていた。何を持ってきてくれたのかも気になった──いや、彼そのものが気になっていたのだが、それは莉子自身も気付いていなかった。
サンダルをつっかけ、玄関を開ける。
昨日とは打って変わった穏やかな笑みの男は莉子と対面した。
「夜分に済みません」
男はまず謝った、もっとも莉子にとっては夜の十時など昼間に近い、首を左右に振って応える。
「それに昨日は醜態をお見せしまして……俺も仕事帰りで疲れていたのに、同居してる弟に締め出されたと思って怒りが」
恥ずかしそうに言う姿に、莉子は思わず微笑んだ。
「弟さんとお住まいなんですか?」
「ええ、こちらの大学に合格したので、在学中は面倒を見る事に。もう、絶対俺のところに来るのが目的でこっちの大学を受験したんですよね」
と言う事は春からだろうか、同居は数カ月と言うところか。
「仲良しなんですね」
うちとは違うな、と莉子は思いながら聞いていた。
「年が離れてますからね、弟にしたら兄と言うより叔父みたいな感覚な気がしますけど。夏休みに入ってから、すっかりハメを外しまくっているので、つい怒りが増しまして」
ちょうど十歳違いの兄弟だった、それすら莉子とは違う。
「あ、済みません、これをお詫びに」
両手で持っていた箱を持ち上げた。
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「いえ、これはあなたの為に作ったので」
言われて莉子の心臓は跳ね上がる。
「え……? 私の為に……?」
「昨日、ひと目見て思いました。あなた、ちゃんとご飯、食べてます?」
「え?」
「食べてないでしょ? 駄目ですよ、人は食べ物から栄養を摂って生きてるんですから。しかもただお腹に流し込めばいいんじゃないんです、ちゃんといいものを最適な量で食べないと。それが食育です」
再会は翌日の夜だった。
玄関のインターフォンが鳴って、香子だったら嫌だな、と思いながらモニターを見た。
見た瞬間、心が躍り出すのが判った。
昨日の男性だった、莉子は震える手でインターフォンの受話器を取る。
「はい」
声も震えていた。
『あの、藤堂と申します。済みません、昨日のお詫びに来ました』
心地よく響くテノールの声に、莉子は聞き入りそうになった。
「あ、いえ……勘違いなのは判りましたから、そんなお詫びなんて……」
『いえ、折角作ってきましたから、是非受け取ってください』
「……作る?」
『はい』
それ以上は会って話すとでも言いたげに、藤堂と名乗った男は手に持ったペール型の縦長の箱を持ち上げた。
いつもなら断っていただろう。
しかし莉子は大きな疑問も持たず……いや、もう一度くらい逢いたいと、玄関へ向かっていた。何を持ってきてくれたのかも気になった──いや、彼そのものが気になっていたのだが、それは莉子自身も気付いていなかった。
サンダルをつっかけ、玄関を開ける。
昨日とは打って変わった穏やかな笑みの男は莉子と対面した。
「夜分に済みません」
男はまず謝った、もっとも莉子にとっては夜の十時など昼間に近い、首を左右に振って応える。
「それに昨日は醜態をお見せしまして……俺も仕事帰りで疲れていたのに、同居してる弟に締め出されたと思って怒りが」
恥ずかしそうに言う姿に、莉子は思わず微笑んだ。
「弟さんとお住まいなんですか?」
「ええ、こちらの大学に合格したので、在学中は面倒を見る事に。もう、絶対俺のところに来るのが目的でこっちの大学を受験したんですよね」
と言う事は春からだろうか、同居は数カ月と言うところか。
「仲良しなんですね」
うちとは違うな、と莉子は思いながら聞いていた。
「年が離れてますからね、弟にしたら兄と言うより叔父みたいな感覚な気がしますけど。夏休みに入ってから、すっかりハメを外しまくっているので、つい怒りが増しまして」
ちょうど十歳違いの兄弟だった、それすら莉子とは違う。
「あ、済みません、これをお詫びに」
両手で持っていた箱を持ち上げた。
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「いえ、これはあなたの為に作ったので」
言われて莉子の心臓は跳ね上がる。
「え……? 私の為に……?」
「昨日、ひと目見て思いました。あなた、ちゃんとご飯、食べてます?」
「え?」
「食べてないでしょ? 駄目ですよ、人は食べ物から栄養を摂って生きてるんですから。しかもただお腹に流し込めばいいんじゃないんです、ちゃんといいものを最適な量で食べないと。それが食育です」