Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「とんでもない。俺も作るのが好きだからこの仕事をしているので、おいしいと言ってもらえて嬉しかっただけです」
優しい笑顔を、莉子はチラチラとしか見る事ができなかった。思えばこんなに男性が近くにいるのは、随分久々だと思い出した。
藤堂は弁当を差し出す、昨日と同じペール型の弁当箱だった。
莉子は小さな声で礼を述べてそれを受け取る、その手を藤堂は包み込むように触れた。
「──はい!?」
莉子の心臓が飛び出しそうになる、温かい手は振り払いたくてもできなかった、弁当を持っているからと心の中で言い訳する。
「あの……!」
「冷たいですね」
「あ……クーラー、効き過ぎかな……?」
何処を見てよいか判らず俯くと、その顎に指がかかって上を向かされた。
「──え……!?」
間近に迫る藤堂の顔に、恥ずかしくも、見惚れる。
「──顔色も悪い」
「え?」
現時点では顔は熱いくらいだが、それでも悪いのだろうか。
「あ、あの……っ」
近い、息がかかるほどの近さに戸惑う。
「──判りました」
その声は、初めて会った時のように低く怖かった、何を怒らせたのだろうと莉子は体を強張らせた。
「俺の弁当だけで生きながらえていると言うなら、その責務を負いましょう」
「え!?」
それがなくても今までだって十分生きていた、と思うのに、とんでもない宣言をされた。
「これから毎日弁当を届けます、いいですね?」
「──はい」
有無を言わさぬ言い方に思わずうなずいてしまったが、密かにこの男との関係が出来たことが、莉子には嬉しかった。
*
それから四日後の、それは昼間の事だった。
インターフォンが鳴る。莉子の家のそれが鳴るのは宅配か両親が訪ねて来るくらいだったが、最近は夜には藤堂と言う男が来る事ですっかり緊張がなくなっていたが。
リビングに向かう間に、昼日中、そして特に発注したものもないのに来客だと思い直し、少し嫌な気持ちを呼び起こす。香子か、香子が所属する事務所の誰かだろうかと思えたからだ。
だがモニターを見て安堵する、そこにいたのは藤堂だった。
(こんな時間に……?)
それでも受話器を取って「すぐ行きます」と応えて、返事は聞かずに玄関へ向かった。
ドアを開けると、藤堂は笑顔で立っていた。
「今日はランチです、お店が休みなので」
「ああ、そうなんですね」
「どうぞ」
藤堂が当たり前のように差し出した弁当を見る、いつもの使い捨ての箱ではなく大きめのタッパーだった。
「そんな。なのにわざわざ……」
莉子は恐縮しながらも受け取る。
「言ったでしょう、あなたに弁当を届けると」
「あの、嬉しいですけど……藤堂さんもお忙しいんでしょ?」
優しい笑顔を、莉子はチラチラとしか見る事ができなかった。思えばこんなに男性が近くにいるのは、随分久々だと思い出した。
藤堂は弁当を差し出す、昨日と同じペール型の弁当箱だった。
莉子は小さな声で礼を述べてそれを受け取る、その手を藤堂は包み込むように触れた。
「──はい!?」
莉子の心臓が飛び出しそうになる、温かい手は振り払いたくてもできなかった、弁当を持っているからと心の中で言い訳する。
「あの……!」
「冷たいですね」
「あ……クーラー、効き過ぎかな……?」
何処を見てよいか判らず俯くと、その顎に指がかかって上を向かされた。
「──え……!?」
間近に迫る藤堂の顔に、恥ずかしくも、見惚れる。
「──顔色も悪い」
「え?」
現時点では顔は熱いくらいだが、それでも悪いのだろうか。
「あ、あの……っ」
近い、息がかかるほどの近さに戸惑う。
「──判りました」
その声は、初めて会った時のように低く怖かった、何を怒らせたのだろうと莉子は体を強張らせた。
「俺の弁当だけで生きながらえていると言うなら、その責務を負いましょう」
「え!?」
それがなくても今までだって十分生きていた、と思うのに、とんでもない宣言をされた。
「これから毎日弁当を届けます、いいですね?」
「──はい」
有無を言わさぬ言い方に思わずうなずいてしまったが、密かにこの男との関係が出来たことが、莉子には嬉しかった。
*
それから四日後の、それは昼間の事だった。
インターフォンが鳴る。莉子の家のそれが鳴るのは宅配か両親が訪ねて来るくらいだったが、最近は夜には藤堂と言う男が来る事ですっかり緊張がなくなっていたが。
リビングに向かう間に、昼日中、そして特に発注したものもないのに来客だと思い直し、少し嫌な気持ちを呼び起こす。香子か、香子が所属する事務所の誰かだろうかと思えたからだ。
だがモニターを見て安堵する、そこにいたのは藤堂だった。
(こんな時間に……?)
それでも受話器を取って「すぐ行きます」と応えて、返事は聞かずに玄関へ向かった。
ドアを開けると、藤堂は笑顔で立っていた。
「今日はランチです、お店が休みなので」
「ああ、そうなんですね」
「どうぞ」
藤堂が当たり前のように差し出した弁当を見る、いつもの使い捨ての箱ではなく大きめのタッパーだった。
「そんな。なのにわざわざ……」
莉子は恐縮しながらも受け取る。
「言ったでしょう、あなたに弁当を届けると」
「あの、嬉しいですけど……藤堂さんもお忙しいんでしょ?」