Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「食べる事は生きる事です。一人分作るのが増えた事でどうと言う事ではありません」
優しいが有無を言わさぬ物言いに、莉子は小さくなって、礼を述べた。
恐らく藤堂にとっては、本当に家族に食事を作っている気分なのだろう。嬉しいが、恥ずかしい……でもそれを言うのは憚れた。
今日も笑顔を残して去る藤堂を見送って。
部屋に戻ると、莉子はまだ温かいその弁当を早速頬張った。
家にある材料だったのだろう、今日はぐっと和風の弁当だった。メインはサバの味噌煮、付け合わせはインゲンの胡麻和えや茄子とピーマンの炒め物だった。
「……すごい……こんなものも作れるんだ……」
正直母が作る料理より美味しいと思えた、普段客に料理を振る舞っているからだろうか、フレンチとは全く系統の違う料理と言えども間違いない味付けがされていた。
「……こんな人は、どんな人と結婚するんだろうな……」
どうでもいい心配をしていた、少なくとも食事など口に入ればいいと思っている自分はその価値はないだろうと思えて哀しくなった。
(それに……私に恋愛なんか無理……)
ひきこもり、人との接し方が判らない莉子に恋人や結婚ができると思えない。
なにより香子が──子供の頃からそうだった、少し気になる子ができても、必ず香子が仲良くなったり、最悪恋人になったりもする。自分が望むものをさらって行く、それが香子だった。
──香子に、藤堂の存在を知られたくない。
切に願った、毎日ほんの数秒会えるだけの人との時間を、大切にしたかった。
*
食事を終えて、タッパーは返そうと丁寧に洗う。
「……そのまま返すのも、失礼、かな……」
また手紙でも書こうか、そう思ってやめる。
「……いつも、頂いてるお礼に──」
莉子は自然と口の端が緩んだ。
善は急げと言わんばかりに濡れた手を乱暴に拭って、財布を持って部屋を飛び出す。
八月の太陽の直撃にめまいを感じながら、近所のスーパーに駆け込んだ。
*
翌日のやはり夜の十時頃、莉子の部屋のインターフォンが鳴った。
莉子は慌てて立ち上がりリビングに駆け込むとモニターを確認する。今日も藤堂が笑顔で立っていた。
「今行きます」
受話器を一瞬だけ上げて手短に言うと、走って玄関へ向かっていた。
ドアを開けると、藤堂が笑顔で迎えてくれる。
「こんばんは」
「こんば……」
言った瞬間、莉子のお腹が盛大な音を奏でた。
「──え!?」
莉子は真っ赤になってお腹を両腕で押さえた、そんな莉子を見て藤堂は嬉しそうに笑い声を上げる。
「よかった、少しは食べる事に関心が出て来たようですね。俺の顔見てお腹鳴らすのはどうかと思うけど」
「──ごめんなさい」
優しいが有無を言わさぬ物言いに、莉子は小さくなって、礼を述べた。
恐らく藤堂にとっては、本当に家族に食事を作っている気分なのだろう。嬉しいが、恥ずかしい……でもそれを言うのは憚れた。
今日も笑顔を残して去る藤堂を見送って。
部屋に戻ると、莉子はまだ温かいその弁当を早速頬張った。
家にある材料だったのだろう、今日はぐっと和風の弁当だった。メインはサバの味噌煮、付け合わせはインゲンの胡麻和えや茄子とピーマンの炒め物だった。
「……すごい……こんなものも作れるんだ……」
正直母が作る料理より美味しいと思えた、普段客に料理を振る舞っているからだろうか、フレンチとは全く系統の違う料理と言えども間違いない味付けがされていた。
「……こんな人は、どんな人と結婚するんだろうな……」
どうでもいい心配をしていた、少なくとも食事など口に入ればいいと思っている自分はその価値はないだろうと思えて哀しくなった。
(それに……私に恋愛なんか無理……)
ひきこもり、人との接し方が判らない莉子に恋人や結婚ができると思えない。
なにより香子が──子供の頃からそうだった、少し気になる子ができても、必ず香子が仲良くなったり、最悪恋人になったりもする。自分が望むものをさらって行く、それが香子だった。
──香子に、藤堂の存在を知られたくない。
切に願った、毎日ほんの数秒会えるだけの人との時間を、大切にしたかった。
*
食事を終えて、タッパーは返そうと丁寧に洗う。
「……そのまま返すのも、失礼、かな……」
また手紙でも書こうか、そう思ってやめる。
「……いつも、頂いてるお礼に──」
莉子は自然と口の端が緩んだ。
善は急げと言わんばかりに濡れた手を乱暴に拭って、財布を持って部屋を飛び出す。
八月の太陽の直撃にめまいを感じながら、近所のスーパーに駆け込んだ。
*
翌日のやはり夜の十時頃、莉子の部屋のインターフォンが鳴った。
莉子は慌てて立ち上がりリビングに駆け込むとモニターを確認する。今日も藤堂が笑顔で立っていた。
「今行きます」
受話器を一瞬だけ上げて手短に言うと、走って玄関へ向かっていた。
ドアを開けると、藤堂が笑顔で迎えてくれる。
「こんばんは」
「こんば……」
言った瞬間、莉子のお腹が盛大な音を奏でた。
「──え!?」
莉子は真っ赤になってお腹を両腕で押さえた、そんな莉子を見て藤堂は嬉しそうに笑い声を上げる。
「よかった、少しは食べる事に関心が出て来たようですね。俺の顔見てお腹鳴らすのはどうかと思うけど」
「──ごめんなさい」