Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
***
Cacco whit bangの解散騒動から半年。解散直後に香子の電撃移籍が報道され、かなりの騒動になった。本当に歌声を聴けなくなるのでは? そんな拓弥を始めとするファン達の心配をよそに、香子はすぐに花村香子と本名を名乗ってシングルを発表した。それは香子が作詞作曲したものだ。売り上げとしては悪くない、しかしそれはCaccoファンが闇雲に買ったのが理由だ。
現に発売直後こそ売れたが、あとが続かない、プロの評判もさほどよくはない。これが実力と、龍一も香子本人も判っている。
そして、今日は香子が莉子の家を訪ねると約束した日。
既に花村家と藤堂家の顔合わせを済ませ、結納も済ませた。日取りや式場やドレスなど、様々な事がどんどん決まっていく中。
もともと内気な莉子は、軽くマリッジブルーにもなる、その相談相手は香子だった。莉子からすればゴーストライターではなくなり、香子と仕事を通した話をしなくなった事で、少しずつ距離が縮まっている気がしていた。現に相談をすれば香子はきちんとアドバイスをくれる。姉としての香子は、頼もしかった。話のついでに、香子は時折莉子の家を訪ねる様になった。それまで寄り付くこともなく、用事は電話で済ます事が多かった香子の訪問を、莉子は素直に喜ぶ。これが姉妹と言うものなのかと実感していた。
現在、莉子の家は尊の家だ。あれこれ相談したが、やはり家で料理をしたい尊には自分の身長にあったキッチンが有難い。莉子が買った部屋は手離すことなく、賃貸で貸し出している。
店が休みの尊が料理の支度をしている中、その部屋のインターフォンが鳴る。
「拓弥くんだなぁ」
莉子は笑って玄関へ向かう、今日もドアを乱暴に叩いているので判った。
開けると満面の笑みの拓弥が飛び込んで来る。大学から直接来た、今はさすがに親が気を遣って尊の元から離し、大学近くのアパートに住んでいるが、度々、尊の店が休みの日はやってくる、食事が目的だ。そんな時は前触れもなくやってくるが、今日は莉子が招待していた。
「遅くなった! 香子さん!!!」
肩で息をしながら言う。
「ごめんね、莉子なんだけど」
困った顔で謝る。
「あ、ごめん! 間違えた訳じゃない! 来てないの!?」
「あ、それもごめんね、なんか収録伸びたとかで少し遅れてるの、あと15分くらいで着くって、さっき電話が」
「そっか! よかった! じゃ顔洗って歯磨いて、あーシャワー借りていい!?」
莉子はクスクス笑いながら了承した。リビングに戻ると、キッチンの尊が呆れた様子で言う。
「あいつは何をするつもりなんだ」
「好きな人に会うから、いろいろ気を遣うんでしょ」
莉子は笑うばかりだ。尊は溜息を吐く。
「万が一、拓弥と香子がどうにかなった場合、俺としてはかなり複雑だぞ?」
「そうだねー」
Cacco whit bangの解散騒動から半年。解散直後に香子の電撃移籍が報道され、かなりの騒動になった。本当に歌声を聴けなくなるのでは? そんな拓弥を始めとするファン達の心配をよそに、香子はすぐに花村香子と本名を名乗ってシングルを発表した。それは香子が作詞作曲したものだ。売り上げとしては悪くない、しかしそれはCaccoファンが闇雲に買ったのが理由だ。
現に発売直後こそ売れたが、あとが続かない、プロの評判もさほどよくはない。これが実力と、龍一も香子本人も判っている。
そして、今日は香子が莉子の家を訪ねると約束した日。
既に花村家と藤堂家の顔合わせを済ませ、結納も済ませた。日取りや式場やドレスなど、様々な事がどんどん決まっていく中。
もともと内気な莉子は、軽くマリッジブルーにもなる、その相談相手は香子だった。莉子からすればゴーストライターではなくなり、香子と仕事を通した話をしなくなった事で、少しずつ距離が縮まっている気がしていた。現に相談をすれば香子はきちんとアドバイスをくれる。姉としての香子は、頼もしかった。話のついでに、香子は時折莉子の家を訪ねる様になった。それまで寄り付くこともなく、用事は電話で済ます事が多かった香子の訪問を、莉子は素直に喜ぶ。これが姉妹と言うものなのかと実感していた。
現在、莉子の家は尊の家だ。あれこれ相談したが、やはり家で料理をしたい尊には自分の身長にあったキッチンが有難い。莉子が買った部屋は手離すことなく、賃貸で貸し出している。
店が休みの尊が料理の支度をしている中、その部屋のインターフォンが鳴る。
「拓弥くんだなぁ」
莉子は笑って玄関へ向かう、今日もドアを乱暴に叩いているので判った。
開けると満面の笑みの拓弥が飛び込んで来る。大学から直接来た、今はさすがに親が気を遣って尊の元から離し、大学近くのアパートに住んでいるが、度々、尊の店が休みの日はやってくる、食事が目的だ。そんな時は前触れもなくやってくるが、今日は莉子が招待していた。
「遅くなった! 香子さん!!!」
肩で息をしながら言う。
「ごめんね、莉子なんだけど」
困った顔で謝る。
「あ、ごめん! 間違えた訳じゃない! 来てないの!?」
「あ、それもごめんね、なんか収録伸びたとかで少し遅れてるの、あと15分くらいで着くって、さっき電話が」
「そっか! よかった! じゃ顔洗って歯磨いて、あーシャワー借りていい!?」
莉子はクスクス笑いながら了承した。リビングに戻ると、キッチンの尊が呆れた様子で言う。
「あいつは何をするつもりなんだ」
「好きな人に会うから、いろいろ気を遣うんでしょ」
莉子は笑うばかりだ。尊は溜息を吐く。
「万が一、拓弥と香子がどうにかなった場合、俺としてはかなり複雑だぞ?」
「そうだねー」