Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
そして、来いと言われて店へ足繁く通い始めるのだ。そして初めて尊への想いを自覚したこと、初めて結ばれた日の事──それらを思いつくまま歌詞にした。
音符に乗せて気持ちを表すと、言葉は次から次へと浮かんでくる。一時間ほどで下書きはできた、読み返して赤面してしまう。
「──正直にもほどがある。こんなの皆の前で、香子の声で歌われたら、私、死ぬわ……」
尊も恥ずかしがるだろうか……いや、喜ぶかもしれない。そうは思ったが、恥ずかしい歌詞は迷わず削除し、両手で頬を叩いて気合を入れ直す。
「お仕事モードでやりましょ」
そうして歌詞も三日で完成させ、香子に渡した。
楽曲を一目見て、龍一はほくそ笑む。
「──でかした」
何をと聞かなくても香子にも判る、音符と歌詞だけで見えて来る、それはこれまで莉子が生み出してきた楽曲の中でも、最高クラスに入る出来だった。
間違いなくヒットし、いつまでも記憶の片隅に残るであろう歌だ。ブランクを感じさせないその歌は、可愛らしいアップテンポなポップスの曲だった。
それまでのCacco with bangでは発表してこなかった曲調だが、披露宴当日は香子のピアノ、HAL(ハル)のギター、流星のパーカッションで演奏され、好評を博した。
拓弥は勿論、尊も喜んでくれて、莉子は嬉しかった。
***
そして。 挙式から四カ月。 Le Bonheur(レ・ボナー)のドアが開き、入ってきたのは香子と龍一だった。
「あ、いらっしゃい」
結婚後、尊の店を手伝うようになった莉子が席に案内する。
「莉子ちゃん、考えてくれた?」
龍一が前置きもなく聞く、ここ最近、している質問は同じだ。
「はい、でも、私はやっぱり……」
莉子は申し訳なさそうに断る。
「私もさあ、やっぱ莉子の歌を歌いたいのよ」
香子が莉子の考えを遮るよう言う、無理矢理腕を引き、自分の隣の椅子に座らせた。
「機材ならこっちで揃えるから。尊くんと住む家を仕事部屋にしたくないなら、会社で部屋も用意するってよ?」
莉子が結婚式の為に作った歌を、香子は莉子にも尊にも内緒で自身の三枚目のシングル曲として発売した。披露宴から三ヶ月後のことだった。
莉子は驚き、それでも「仕方ないな」で済ませてしまう。莉子が何も聞かされていなかったことに、尊は怒り心頭だ。以来理由をつけて香子を部屋に上げなくなった、あからさまだと笑われても、嫌なものは嫌なのだ。
音符に乗せて気持ちを表すと、言葉は次から次へと浮かんでくる。一時間ほどで下書きはできた、読み返して赤面してしまう。
「──正直にもほどがある。こんなの皆の前で、香子の声で歌われたら、私、死ぬわ……」
尊も恥ずかしがるだろうか……いや、喜ぶかもしれない。そうは思ったが、恥ずかしい歌詞は迷わず削除し、両手で頬を叩いて気合を入れ直す。
「お仕事モードでやりましょ」
そうして歌詞も三日で完成させ、香子に渡した。
楽曲を一目見て、龍一はほくそ笑む。
「──でかした」
何をと聞かなくても香子にも判る、音符と歌詞だけで見えて来る、それはこれまで莉子が生み出してきた楽曲の中でも、最高クラスに入る出来だった。
間違いなくヒットし、いつまでも記憶の片隅に残るであろう歌だ。ブランクを感じさせないその歌は、可愛らしいアップテンポなポップスの曲だった。
それまでのCacco with bangでは発表してこなかった曲調だが、披露宴当日は香子のピアノ、HAL(ハル)のギター、流星のパーカッションで演奏され、好評を博した。
拓弥は勿論、尊も喜んでくれて、莉子は嬉しかった。
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そして。 挙式から四カ月。 Le Bonheur(レ・ボナー)のドアが開き、入ってきたのは香子と龍一だった。
「あ、いらっしゃい」
結婚後、尊の店を手伝うようになった莉子が席に案内する。
「莉子ちゃん、考えてくれた?」
龍一が前置きもなく聞く、ここ最近、している質問は同じだ。
「はい、でも、私はやっぱり……」
莉子は申し訳なさそうに断る。
「私もさあ、やっぱ莉子の歌を歌いたいのよ」
香子が莉子の考えを遮るよう言う、無理矢理腕を引き、自分の隣の椅子に座らせた。
「機材ならこっちで揃えるから。尊くんと住む家を仕事部屋にしたくないなら、会社で部屋も用意するってよ?」
莉子が結婚式の為に作った歌を、香子は莉子にも尊にも内緒で自身の三枚目のシングル曲として発売した。披露宴から三ヶ月後のことだった。
莉子は驚き、それでも「仕方ないな」で済ませてしまう。莉子が何も聞かされていなかったことに、尊は怒り心頭だ。以来理由をつけて香子を部屋に上げなくなった、あからさまだと笑われても、嫌なものは嫌なのだ。