Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「そしたら爆発的ヒットでさ。香子の妹が、って巷は大騒ぎなのよ。是非次もって思うのは当たり前だぜ?」
「莉子が身を削るように歌を作っていたのは知っています」
まるで恩返しをする鶴のように、家に引きこもる様にして楽曲を作っていたのだ。もっとも結婚後は意欲的にと尊の店を手伝ってくれているが、どうにも居心地が悪そうだ。元が内気な性格な上、テレビにも出て、楽曲が売れた事で名前も知られてしまったのがよくなかった。
「そんなことはもうさせたくありません」
「今度の香子のアルバム用で、半年以上先の発売予定だ、予定は未定だから莉子ちゃんの進捗状況に合わせるから、そんなに根を詰めなくてもできるだろうし、これが最初の最後で」
龍一の言葉に、尊は睨みつける。本当に最後だと思っているのかと言う疑いだ。
「お願いよ、莉子ぉ」
香子の言葉に、莉子は小さく首を左右に振る。
「ごめん……やっぱりやめとく……」
一年前の『辞めたい』と思い続けていた記憶は薄れていない。尊を想って書いた曲が皆に受け入れられたのは嬉しいが、もうそれ以上の歌は作れないだろうと感じている。莉子からすればそれは『ビギナーズラック』みたいなものだ、自分に曲を作る才能などあるとは思っていない。
返事を聞いて尊はすぐさま莉子の手を引いて立ち上がらせると、その席から引き離す。
香子と龍一がすぐになにやら話し始めたが、莉子は耳をそばだてることはしなかった。
香子が帰るまで、莉子はフロアに出なかった、帰ってようやくウェイトレスの仕事を始めると、すぐに客に言われる。
「莉子ちゃん」
常連と言えるおばさまだった、莉子が足繁くLe Bonheurに通っていた頃からの顔見知りだ。
「さっき香子ちゃん来てたわね。また歌を作る相談?」
香子とは入れ違うように入店したので、尊の様子も見ていないのだろう、莉子は曖昧に微笑んだ。
「この間の曲ね、今度姪っ子が結婚するんだけど、披露宴で入場するときの曲にするんだって嬉しそうに言っていてね」
「そうなんですか? ありがとうございます」
「でもね、新郎の列席者の余興でもその歌を歌うって、被るからどうしようって悩んでたわ。いい曲だものね、みんな歌いたいのね」
「ありがとうございます」
莉子は恥ずかしそうに微笑む、褒められているのに、穴があったら入りたいとはこの事だと思った。
「ねえね。『あなたに出逢えてよかった』って、直接オーナーには……」
莉子は持っていたお盆で、その客の顔を覆った。
「莉子が身を削るように歌を作っていたのは知っています」
まるで恩返しをする鶴のように、家に引きこもる様にして楽曲を作っていたのだ。もっとも結婚後は意欲的にと尊の店を手伝ってくれているが、どうにも居心地が悪そうだ。元が内気な性格な上、テレビにも出て、楽曲が売れた事で名前も知られてしまったのがよくなかった。
「そんなことはもうさせたくありません」
「今度の香子のアルバム用で、半年以上先の発売予定だ、予定は未定だから莉子ちゃんの進捗状況に合わせるから、そんなに根を詰めなくてもできるだろうし、これが最初の最後で」
龍一の言葉に、尊は睨みつける。本当に最後だと思っているのかと言う疑いだ。
「お願いよ、莉子ぉ」
香子の言葉に、莉子は小さく首を左右に振る。
「ごめん……やっぱりやめとく……」
一年前の『辞めたい』と思い続けていた記憶は薄れていない。尊を想って書いた曲が皆に受け入れられたのは嬉しいが、もうそれ以上の歌は作れないだろうと感じている。莉子からすればそれは『ビギナーズラック』みたいなものだ、自分に曲を作る才能などあるとは思っていない。
返事を聞いて尊はすぐさま莉子の手を引いて立ち上がらせると、その席から引き離す。
香子と龍一がすぐになにやら話し始めたが、莉子は耳をそばだてることはしなかった。
香子が帰るまで、莉子はフロアに出なかった、帰ってようやくウェイトレスの仕事を始めると、すぐに客に言われる。
「莉子ちゃん」
常連と言えるおばさまだった、莉子が足繁くLe Bonheurに通っていた頃からの顔見知りだ。
「さっき香子ちゃん来てたわね。また歌を作る相談?」
香子とは入れ違うように入店したので、尊の様子も見ていないのだろう、莉子は曖昧に微笑んだ。
「この間の曲ね、今度姪っ子が結婚するんだけど、披露宴で入場するときの曲にするんだって嬉しそうに言っていてね」
「そうなんですか? ありがとうございます」
「でもね、新郎の列席者の余興でもその歌を歌うって、被るからどうしようって悩んでたわ。いい曲だものね、みんな歌いたいのね」
「ありがとうございます」
莉子は恥ずかしそうに微笑む、褒められているのに、穴があったら入りたいとはこの事だと思った。
「ねえね。『あなたに出逢えてよかった』って、直接オーナーには……」
莉子は持っていたお盆で、その客の顔を覆った。