野獣は時に優しく牙を剥く

「僕の恋人ということかな?とか、僕からのキスはいいのかな?とか、たまにご自身のことを僕と言われて、その、仕事の時は俺ではなく僕と言われるので、その、、仕事として私を側に置きたいということでしょうか。」

 言いたいことがまとまらなくて、支離滅裂な澪の意見を肩から顔を上げた龍之介は真剣な表情で考えている。

 そしてぽつりと呟いた。

「柄にもなく緊張してるってことかな。
 格好つかないな。」

 自分の髪をかき回して照れ臭そうに鼻をかいた。
 その姿はなんだか可愛らしい。

「なんだ。
 谷さんいつも余裕だから私ばかり緊張してるんだと……。」

「ほら。澪。また谷さんだ。
 龍之介って呼ばれた方が俺へ気を許してくれている気がする。
 フッ。俺が自分のことを俺と言ったり僕と言ったりするのと同じだね。」

 龍之介のことが愛おしくなって、彼の服の裾をつかんだ。

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