野獣は時に優しく牙を剥く

「繁栄をもたらす印のことを知ってしまったら恐ろしい仕打ちが待ってるんですか?」

「え?あぁ。部外者に話してはいけない決まりなんだ。」

「じゃ、せっかく虎之介さん達に私の痣のことを隠してくださっても、私は龍之介さんと部外者ではいられないってことですよね?」

 澪の意見に龍之介は目を丸くして「まいったな」とこぼした。

「これじゃ澪を縛ることに変わりないじゃないか。」

 口惜しそうに言う龍之介へ澪は訂正した。

「違うんです。
 私がその方がいいんです。」

「え?」

 面食らった顔をする龍之介へ澪は続けた。

「龍之介さんの側にいられる理由が欲しいんです。
 縛られているからという言い訳が。
 ごめんなさい。狡い考えで。」

 離れていた距離を一歩詰めて谷は腕の中に澪を収めた。
 そして背中に腕を回す。

「それは、澪も側にいたいって思ってくれていると解釈していいんだよね?」

 改めて聞かれると恥ずかしいけれど龍之介の腕の中で小さく頷いた。

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