野獣は時に優しく牙を剥く
「澪。こっちを向いて。
俺だって緊張してる。」
手を取られ、龍之介の胸元に添えられた。
滑らかな素肌の奥にある心臓がドクドクと波打ち早鐘を打っていた。
「あ、あの。だって谷さんが男らしくて恥ずかしいです。」
「ほら、また谷さんに逆戻り。」
クスリと笑った龍之介がゆっくりと覆いかぶさって唇にキスをした。
軽いキスを何度もしているとだんだん澪も恥ずかしい気持ちよりも龍之介に少しでも近づきたい気持ちになって腕を伸ばした。
その腕を取られ、首の後ろに回される。
そして唇の隙間から深いキスへと変わっていき、熱い吐息を漏らす。
龍之介の手が澪の体のラインを確かめるように素肌につつっと触れて、体を捩った。
「怖い?」
心配そうな声色に「少し。でもそれよりも恥ずかしいです」と答えると「それは俺も同じ」と控えめだった触れる手が大胆に澪を捕まえた。
「怖かったり嫌だったら言って?
止められる自信はあまりないんだけど。」
最後の一言は困るはずなのに色気を含んだ切なそうな表情に胸の奥がギュッとつかまれた気がした。