愛しいのは君だけ
「っいい、気にしないで。それより、これから紹介するんじゃなかったの」
「あぁ、そうだったな。こっちが、」
「知っていると思いますけれど、わたくしはシャルルエネ・ノア・ジェラルドですわ」
シャルルエネがふんわりとした笑みを浮かべてお辞儀した。
騎士の格好をしているが、こうやって見るとやっぱりお嬢様だ。
「エネ、その喋り方気になる」
「……はぁ?」
「シャルル、落ち着いて。グランスは余計な事言わない」
少女は困り顔で2人の間に入った。
それから僕の方へと向き直ると、とても綺麗なお辞儀をして笑みを浮かべる。
「私はシエラと申します。あなたは?」
……シエラ?
シエラって第一王女の名前と同じだった気が……。
まぁ、シエラって名前は第一王女に憧れて流行ってた時期もあるから珍しくはないけれど。
「僕は、ヴィンセント」
「ファーストネームだけしか教えてくださらないのですか?」
「君だってそうじゃない」
「ふふ、そうでした。…………私は、シエラティローザ・ゼノ・ヴェニカです」
少女はそう言って、使用人の服の両端を持ち上げ少し体を低くしてお辞儀した。