愛しいのは君だけ
「ダメ……?」
シエラが小首を傾げて近付いてきた。
ふわりと薔薇の香りが濃くなる。
「……っ、」
クラリと眩暈(めまい)のようなものがした。
シエラはベッドの縁へと腰掛けると、手を伸ばしてきた。
逃げようにも、体が金縛りにあったかのように動かない。
まず、グランスかシャルルが見てないで止めてくれればいいのに。
て言うか、今すぐ止めて。
「……綺麗な肌ね」
気付けば頬に彼女の手が触れていた。
「男の人って、もっと汚いものかと思っていたわ。勝手な想像するのは良くないわね」
甘い薔薇の香りが更に濃くなる。
「あなたは、とても綺麗な人ね」
シエラの黒い瞳がジッと見つめてくる。
目の錯覚か、シエラの周りに沢山の薔薇の花弁が舞っているようにみえる。
「……っなに、これっ」
大量のお酒を飲んだみたいにクラクラする。
酔っているみたい。
「.......っ」
段々と体中が甘い薔薇に侵されていって、目の前が真っ暗になった。