愛しいのは君だけ

「ダメ……?」

シエラが小首を傾げて近付いてきた。

ふわりと薔薇の香りが濃くなる。


「……っ、」

クラリと眩暈(めまい)のようなものがした。

シエラはベッドの縁へと腰掛けると、手を伸ばしてきた。

逃げようにも、体が金縛りにあったかのように動かない。

まず、グランスかシャルルが見てないで止めてくれればいいのに。

て言うか、今すぐ止めて。


「……綺麗な肌ね」

気付けば頬に彼女の手が触れていた。


「男の人って、もっと汚いものかと思っていたわ。勝手な想像するのは良くないわね」

甘い薔薇の香りが更に濃くなる。


「あなたは、とても綺麗な人ね」

シエラの黒い瞳がジッと見つめてくる。

目の錯覚か、シエラの周りに沢山の薔薇の花弁が舞っているようにみえる。


「……っなに、これっ」

大量のお酒を飲んだみたいにクラクラする。

酔っているみたい。


「.......っ」





段々と体中が甘い薔薇に侵されていって、目の前が真っ暗になった。
< 18 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop