愛しいのは君だけ
「……あの人、何考えてる」
「そんなの知らないわよ」
「ねぇ、違うの?」
シエラの香りが媚薬……。
まぁ、それはあながち間違いではないけれど。
実際、普通の人にはそこまで効かない。
ちょっとおかしくなるだけ。
シエラと適合する者が、かなり香りに敏感らしい。
つまり、彼はシエラと適合するって事になるけど。
「……そうだな」
「私の血はもっと危険な毒」
シエラはそう言って唇を噛み締めた。
「それは、」
確かにそれも事実だけれど。
普通の人には何ら危険性のないもので、もし毒だったならその毒に当たった人物がシエラにとって危険人物だった場合のみだ。
「私が、異質だから」
「シエラ、それは違う」
「……違くなんて、ないでしょ?だって、私はお母様みたいな瞳の色じゃない。だから、宮殿を追い出されたの」
「特別なだけだ。姫様が恋をして結ばれれば、全て元通りになるって前女王様が言ってたんだろ?自分の母親の言うこと信じられないでどうする」
「……っそう、だったね。だから、今日離宮を抜け出して街に出たんだもの」
シエラは悲しげな顔で俯いた。