愛しいのは君だけ
「こんなところで何してるの」
固いブーツのような足音がコツコツと路地に鳴り響いて、黒いマントを羽織ったどこかの貴族らしき男性が剣を持って立っていた。
少女の肩がビクッと震える。
「……ねぇ、答えて」
男性が少女に近づくと、彼女は壁から離れて後退りした。
ローブのフードを被り直して、腰元に手を当てて警戒している。
「君、僕の声聞こえてる?」
問いかけても答えない少女に対してしびれを切らしたのか、男性の口調は柔らかいものの刺がある。
「……っ、」
少女はフードの下から男性をキッと睨みつけると両手でローブの中の腰元から長剣を抜き、男性との間に距離を取った。
少女の持つ二本の長剣の切っ先が男性の上半身に向けられる。
「……この僕と殺る気?」
男性の腰元にも剣があり、少女の物よりも少し大きめだった。
スッと鞘から剣を出すと、少女に向けて構える。
暗い細道の中、お互いの顔は見えなかった。
「……っ!」
先に動いたのは少女の方で、二本の長剣を構えて男性に襲いかかった。
キィンッと三つの剣がぶつかり合ってお互いに後退りする。
「へぇ、結構強そうだね」