愛しいのは君だけ
動けずにいた男性がその様子を見て、「どういう、ことだ」と眉を寄せて立ち尽くす。
少女は男が地面で蹲って苦しむ様子を、冷たい表情で見下ろした。
「……私の血は毒よ。そして、この香りもあなたみたいな悪事しかしてない人にとってはいい物じゃ無いみたいね」
そう言った少女の言葉は恐らく男性までは聞こえていない。
さっきよりも甘い薔薇の強い香りが身体から漂う。
数メートル離れているのにも関わらず、男性の方まで香りが飛んでいく。
「……っこの香り、君……?」
男性が薔薇の香りに酔って体勢を崩し、壁へ凭れ掛かる。
__________そこへ
『シエラ~ッ』
『……ッとんでもないバラの香り!』
すぐ近くで声が聞こえてきて、少女は細道の入ってきた方を振り返る。
そこには気品の高そうな若い2人が立っていた。
どちらも腰元に剣を携え、マントを羽織っている。
「……っシエラ!!」
女の騎士の方が目を見開き、慌てて少女の方へと駆け寄った。
もう一人の男の騎士がゆっくりと細道へ入っていくと、壁に凭れ掛かる男性の方へと慌てて駆け寄った。