クラスメイトの告白。


「汐野は将来いい奥さんになるな」


「そ、そう?」


彼氏いないけど。


そのまえに初恋もまだだけど。


でも、いつか私も誰かと結婚するのかな。


どこにいるんだろう……私の運命のひと。


「優しくて、おもしろくて、料理もうまいって最高の奥さんじゃん」


「褒めるね~」


「弁当作ってもらったから」


「あ、そういうことね」


「うそうそ、本気で思ってる。いただきます」


「ふふっ、どうぞ」


彼は卵焼きをひとくち食べた。


「うんまっ」


「褒めるよね~」


「マジだって!」


「本当? よかったぁ」


私はウィンナーにフォークをさして手に持ったまま、伊原くんが食べる様子を見つめていた。


これが白石さんの手作り弁当だったら、いまの100倍うれしいはず。


事故なんてなかったら、ふたりは幸せに過ごしていたのに。


伊原くんの気持ち、白石さんの気持ち。


ふたりの立場になって考えたら、胸がぎゅっと苦しくなった。


「もーらいっ」


私が持っていたフォークの先にあったウィンナーを、伊原くんがパクッと食べた。


驚いた私は、一瞬動けなくなる。
< 52 / 372 >

この作品をシェア

pagetop