お兄ちゃん系男子は我慢の限界。



「おい、さっきの奴ってもしかして」

「鈴木くん?」

「お前に告ってきた奴か!?」

「ちょ、ここ図書室!うるさいよ」


夏海がシッと眉をひそめて、本を持って立ち上がる。どうやら奥の本棚に戻しにいくようだ。俺もその後をひっついて歩く。


「おい、何でそんな奴と勉強なんかしてんだよ!」

「だってお兄ちゃん教えてくれなかったじゃん、昨日。甘えるな!とか言って」

「それは…!」


あのまま一緒の部屋で、あんな距離にいたら、理性が持ちそうにもなかったからで!


「つ、つーか普通じゃねーよ!自分をフッた女に勉強教えてやるなんて…下心しかねーって!」

「鈴木くんはいい人だよ?」


本を本棚に戻し終えた夏海が俺を見上げて言う。


「あんなことがあっても、仲良くしてくれてるし。友達としてこれからはよろしくって」

「友達って…」


バカだろ。好きな女と友達になれるわけねーじゃん。

でも。だとしたら。じゃぁ。


「…じゃぁ俺は?」

「え?」


歩き始めていた夏海が、不思議そうに俺を振り向く。


「俺は何なんだよ、お前にとって」

「…なに言ってんの?お兄ちゃんは、お兄ちゃんでしょ」


夏海が近づいてきて、笑顔でポンポン、と俺の髪を撫でた。


「……っ」


その瞬間、俺の中で何かのタガが外れた。



< 6 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop