お兄ちゃん系男子は我慢の限界。
「おい、さっきの奴ってもしかして」
「鈴木くん?」
「お前に告ってきた奴か!?」
「ちょ、ここ図書室!うるさいよ」
夏海がシッと眉をひそめて、本を持って立ち上がる。どうやら奥の本棚に戻しにいくようだ。俺もその後をひっついて歩く。
「おい、何でそんな奴と勉強なんかしてんだよ!」
「だってお兄ちゃん教えてくれなかったじゃん、昨日。甘えるな!とか言って」
「それは…!」
あのまま一緒の部屋で、あんな距離にいたら、理性が持ちそうにもなかったからで!
「つ、つーか普通じゃねーよ!自分をフッた女に勉強教えてやるなんて…下心しかねーって!」
「鈴木くんはいい人だよ?」
本を本棚に戻し終えた夏海が俺を見上げて言う。
「あんなことがあっても、仲良くしてくれてるし。友達としてこれからはよろしくって」
「友達って…」
バカだろ。好きな女と友達になれるわけねーじゃん。
でも。だとしたら。じゃぁ。
「…じゃぁ俺は?」
「え?」
歩き始めていた夏海が、不思議そうに俺を振り向く。
「俺は何なんだよ、お前にとって」
「…なに言ってんの?お兄ちゃんは、お兄ちゃんでしょ」
夏海が近づいてきて、笑顔でポンポン、と俺の髪を撫でた。
「……っ」
その瞬間、俺の中で何かのタガが外れた。