クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「あの人って、アンナがいつも言ってる緑の外套を着て帽子を被った“おとなしさん”か?」

アンナが“風来の貴公子”と呼んでいるのに対し、ボブロはちょっとおふざけ交じりに無音(おとなし)と呼ぶ。「もう、そんなふうに呼ばないで」とむくれるアンナをゲラゲラ笑っていつもからかうのだ。

「んで、今夜はなにかお話できたかい?」

そんなこと聞かなくてもわかってるくせに、無精ひげを撫でながらニヤッとする。

「で、できなかったわよ」

アンナが口を尖らせると、ボブロが声を立てて笑った。

「あっはっは。やっぱりおとなしさんだな」

そう言いながら、ボブロはただいまのキスをミネアの頬にすると、さっそく仕事終わりの一杯と、グラスにビールを注いだ。

「ボブロ、馬鹿なこと言ってあんまりアンナをからかわないでくださいな」

「あー、悪い悪い。アンナ、勉強のほうはどうだ?」

ミネアに咎められるとボブロは一気にビールを煽る。そしてゲフッと小さくゲップをするとテーブルに肘をついた。
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