クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
トルシアンを手伝いながら、アンナはずっと薬学の勉強をしていた。それは自分の得意とする薬膳料理の腕を上げるために知識を身につけたいという思いからだった。そのことはローランド夫妻も知っている。仕事の合間を縫って独学で勉強をしているが、アンナには学校には通えない理由があった。それは血縁の家族のない者は、たとえ養父母がいても学校に通えないという、この国の理不尽な法律のせいだった。

一見、平和な王国に見えるが、年々人口が増えるにつれ路上生活の孤児も増えていった。ひと通りの少ない路地は治安も悪く、ボブロに「路地には行くな」と口酸っぱく言われている。大抵の孤児は犯罪に手を染め、優秀な学士への悪影響を懸念して前国王が孤児の就学を禁じてしまったのだ。

「でも、今の国王様が就学の自由のために法律を改訂しようと頑張ってくれてるんでしょ? この前お客さんが言ってたの聞いたの。いつか私も学校に通える日が来るまで地道に頑張るわ」

「そうか、応援しているよ」

辛い状況にも関わらず明るく笑うアンナに、ローランド夫妻はいつも救われるのだった。
< 14 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop