クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
ジークは一点を見つめ、自分に起きたひとことでは言い表せない過去を、どう紡ごうかと思案して、その重い口を開いた。

「私が十五歳のときだった。父上が病に伏すようになってから、次期国王の玉座を狙って王族同士の争いが起り、今は城の地下に幽閉されているがベアトリクスという第二王妃に母は毒殺された。私も毒を盛られ生死の境目をさまよったが、ランドルシア随一の名医だったコンラッド・バンクラール卿の元で一命を取り留め、一時的に療養生活を送っていたんだ」

「バンクラール……って、まさか」

「ああ、お前の父上だ。そして、私を医学の道へ導いてくれた恩師でもある人だ」

そのとき、忘れかけていた記憶の底からとある光景が勢いよくアンナの目の前に広がった。

何歳の頃だったかは定かでないが、入ってはいけないと言われた部屋で天使のような少年と出会った。寝ている間に毎日庭で摘んだ花を飾り、幼心に彼の不思議な魅力にとりつかれていたことを思い出す。
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