クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
自分は今何を言おうとしていたのか、ハッとなって口を噤むと恥ずかしい妄想にアンナは頬を染めた。

「なんだ? どうした? 一度言いかけたら気になるだろう?」

ジークはナプキンで口元をさっと拭うと、アンナの顔を覗き込んだ。

「そ、その……今からすごく馬鹿な事を言いますけど、笑わないでくださいね?」

「ああ、約束しよう」

「旦那様に美味しい食事を作って待っている……奥さんみたい、だなって」

アンナは俯いて、もじもじしながら今にも消え入りそうなくらいの小さな声で言うと、ポンッと頭にジークの大きな手が載せられた。

「お前はきっといい妻になるだろうな。男は胃袋を掴まれると、逃れられなくなるものだ」

優しいジークの声音はアンナの胸をときめかせ、顔をあげると柔和な瞳と視線が合わさる。

「本当ですか?」

「嘘をついてどうする」

いい妻になる。そうジークに思われているだけでも嬉しくて顔が綻ぶ。

(でも、ジーク様の奥さんになる人は……きっと私じゃない)

そんなことわかり切っているのに、なにをいまさら考えて落ち込んでいるのかと、アンナは馬鹿な妄想をかき消した。

「食事の礼ではないが、お前に土産があるぞ」

「え?」

突然、小さな紙袋を手渡されて戸惑いつつも中を見てみると。
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