クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
こうして自分に微笑んでくれる日が突然途絶えてしまったら……という一抹の不安に、心細くてアンナはいつも怯えていた。

(ジーク様の命を救った父の娘だから私も危険だと、ジーク様は言っていたけれど……ジーク様だってきっと、ベアトリクス様に狙われるはずだわ)

「どうした?」

そんな不安が顔に出てしまっていたのか、ジークが怪訝な顔でアンナを覗き込んだ。

「ベアトリクス様は、いったいどんな方なのですか?」

ずっと長年幽閉されていたとはいえ、顔すら知らない相手に命を狙われるほど恐ろしいことはない。ジークはアンナが怯えているのだと悟ると労わるように笑って頭を撫でた。

「お前が心配することはなにもない。だから――」

「教えてください。ベアトリクス様は母上様のみならず、ジーク様にも手に掛けようとしたのでしょう?」

怖がらせないために優しく笑んでくれるのはわかる。しかし、アンナはベアトリクスという人間を知りたかった。

愛する人の命を狙う、ベアトリクスという人を――。

しばしの間、沈黙が垂れ込める。すると、ジークは揺るぎないアンナの視線に小さくため息をつく。そして、テーブルに両肘をついて組んだ手に額を押しつけると静かに口を開いた。
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