クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「ベアトリクスは、ルディアート公爵家の令嬢で十八のときに父上の元へ嫁いできたんだ。ルディアート家の人間は昔から自尊心が高くて、私がレオンより先に生まれて第一王太子となったことで、狂気にも似た嫉妬を母上と私に向けるようになった。嫌がらせも尋常ではなかった。そして利己主義で必要とあれば簡単に人を貶める。母上のようにな……ベアトリクスは、悪魔に魂を売った女なんだ」

実際にジークの母は毒殺され、彼もまた命を狙われた。話だけ聞いていても、ベアトリクスの恐ろしい人間像がアンナを硬直させた。

「そのような方が今、この国のどこかに……きっと、ジーク様のことだってまた狙ってきます。ジーク様が一日ずっと気の休まらない時を過ごしているのかと思うと……」

(それなのに私のことを優先して守ってくれている。私はジーク様になにをしてあげられる……?)

アンナは己の無力さを改めて思い知らされると、胸が締め付けられた。

「そんな顔するな」

不意にジークがアンナの手にしている紙袋からクッキーをひとつ摘まんだ。

「ほら、口を開けてみろ」

「え?」

目が点になっているアンナの口元に、ジークが摘まんだクッキーを持ってくる。そして「早くしろ」と言わんばかりに顎をしゃくった。

「ジ、ジーク様、あの」

「早く」
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