見えない世界でみつけたもの

ただ、そこにあるもの。

 慌ただしく過ぎて行った時間はどれくらいだろうか。

 ……静。

 看護師に手を引かれて連れて来られた場所は病院の中にある病室。看護師に目の前にあるベットに静が寝てると教えてもらい、椅子に腰かけるように促されたのはどれくらい前だろうか。

 時計など見えない俺には時間がどれだけ経ったのは感覚でしか分からない。しかし、その感覚はどうにも麻痺しているのか、今はまったく分からなかった。

 と、俺の事はどうでもいいか。

 静かな部屋の中、耳に届いてくるのは規則正しい寝息を立てて眠っている静がいる。今の様子だと大丈夫そうだが、運ばれてきたときはかなり熱が高くてあと少し遅れていたら危なかったと聞いた。

 
 ……馬鹿野郎。


 それを聞いた俺は激しい後悔の念に襲われた。

 朝も様子がおかしかったのは気付いていたのに、どうして俺は止めなかったのだ。静が嫌がっても無理やりにでも休ませるべきではなかったのか。

 こればかりがさっきから頭をグルグルと巡っている。

 静はやっぱり無理をしていた。

 多分、今までも随分と無理をしていたのだろう。俺が静に頼りっきりだったのは今日の出来事で実感出来た。

 静がいないと俺は何も出来ない事を……。

 このままでは、静も俺も駄目になってしまう。それだけは駄目だ……絶対に駄目だ。
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