ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~
「……俺、一千万が入ってるカードを妖斗に渡して、暗証番号を教えて、逃げろって言ったんだよ」
紅葉さんはそう笑いながら言った。
「え? 一千万ですか?」
「そ。どうせ妖斗は、その半分の500万しか使わないと思うけど。まぁでも、そんだけ金があれば、生活費も、他に必要だって言ってた金もなんとかなるだろ」
言葉を失った。なんで、なんで見ず知らずの他人にこの人はそこまで……。
「なんて顔してんだよ。俺は平気だから。金がなくても生きてけるし」
「生きてけないですよ!!金がなきゃ、食事一つろくに取れませんよ……」
傷の手当をするのをやめて、大声で俺は叫ぶ。
「……そう、かもな。でも、もうあげちゃったからな」
紅葉さんは目尻を下げ、悲しそうに笑った。
「……なんでそこまでしたんですか」
首を傾げて、俺は言う。
「……さぁ、何でだろうな。正直LOVEを好きになりかけてたし、接客も楽しいと思ってた。でも、思い出しちゃったんだよ、妖斗見てたら。……自分の過去のこととか、LOVEが、本当はどんな場所なのかとかさ。それで、10代の奴がいるような場所じゃないと思ってな……」
目尻をさげたまま、紅葉さんは言った。
「……あそこは、地獄だからな。ホストは一見全員仲良く見えるが、裏で喧嘩し放題。愚痴の言い放題。
社長はサボり魔で毎日のように顔を出さないし、そのせいでNo.1の奴がしきってるから、同じ社員に仕切られる意味がわかんないって荒れる奴もいるし。
……それに、新人は他のホストの奴隷みたいなもんだしな」
内容を聞いただけで、心臓を握りつぶされたような錯覚がした。
「本当に地獄……ですね」
「ああ、そうだよ。まぁ俺には、そんなイカれたとこしか居場所がなかったのも事実なんだけど、
妖斗は、違うだろ?
お前みたいな、大事にしてくれる奴がいるみたいだしな」
そう言い、口角を上げて、紅葉さんは笑った。