帝国レストリジア


確かにその気持ちも分からなくない。
だって、そんな僕も心の底からワクワクしている。

今までの相手は肩慣らしにもならないほど呆気なくて、ガッカリしていたところだ。

きっとこの男なら本気を出せる。
そう本能で分かっているかはこそ、僕は楽しみなんだ。

ああ、なんだか笑みを抑えられそうにない。
ニコニコと笑う僕を見て、彼は怪訝な顔をした。




「では、決勝戦を始めます!!」


開始の合図とともに僕は後ろへと距離を取り、相手はそれを阻止するように大きな一振りを振った。

思ったより大剣のリーチが長い。
ギリギリ避けたそれは距離感を間違えれば、体が真っ二つになっていただろう。

あまりの一振りの速さに空気を裂く野太い音がまるでついてきていない。数秒遅れて鳴った音からどれだけ速かったのかが分かる。



1発目から攻撃を繰り出すなんて爽やかな見た目に反して、負けず嫌いなようだ。


____ジリッ

砂の擦れる音がやけに大きく聞こえる。
いつの間にか辺りは先程の喧騒とは打って変わり、静まり返っていた。

どこからか誰かが息の飲む。



その瞬間、走り始めたのは僕。

それに合わせて彼も走る。



あの大剣を持ちながら、僕のスピードについてこれるなんて。


じゃあ、これはどう?



瞬時に方向を切り替えて、右側の剣で脇腹を斬りつけようとすると、それを大剣が受け止める。

想定内だ。


そのまま隙を与えず、左側に持つ剣でガラ空きの左腹を突く。


ギン!!
耳をつんざく不愉快な音が鳴った。



「うわ、これも受け止めるんだ。」

リーチの長い大剣で僕ごと軌道を変えたのか。


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