独占欲強めな同期の極甘な求愛
「お願いします! 私も他の仕事もたまってるんです!」
「無理だって」
しばらく押し問答が続いた。だけど江頭さんはひるまなかった。今度はいたたたっとお腹を押さえしゃがみこみ始めたのだ。
「生理も重なって、ううっ……」
ここまでくると清々しい。私はしゃがみこむ江頭さんからそれを奪うと、貸して! と言って、ストレスをぶつけるようにキーボードを叩いた。彼女の顔は見る気にもならなかった。きっとニヤッとしていたに違いない。だけどこんなやり取りをしている間にも時間は刻々と過ぎていく。どうせどんな手段を使ってでも私になすり付けるつもりなのだろう。それならさっさと白旗を上げたほうがいい。
江頭さんはパソコンに向かう私に、お願いしまーすと明るい声で言ってコツコツとヒールを鳴らしながら、元気そうに自分の席へと戻っていった。
私の人生華やかなことなんて一つもない。昔から雑用や嫌なことを押し付けられることが多い。嫌と言えない自分が一番悪いのだけど。
「お疲れ様です」
カタカタとパソコンの画面とにらめっこしていると、聞き慣れた声が課に響いた。振り返ると爽やかな笑みを浮かべた臣が入ってくるところだった。
「あ! 都倉さん! お疲れさまで~す」
そこにすかさず江頭さんがちょこちょこと小股で近づいていく。さっきの腹痛はどこへやら。
それにしても臣はどこの課へ行っても大歓迎されるんだな。さすが社内の王子。