独占欲強めな同期の極甘な求愛

私は急いでキッチンのほうへ向い、いくつかおしぼりをもらうとソファを叩くように拭いた。だけどやっぱりすでに染みなっていてとれそうにない。これは誠意をもって謝るしかない。そんなことを考えていると、

「ねぇ、君。これ、下げてもらっていい?」

え? 

「ほら、これ。空のやつ。早く片付けて」

顔を上げると、ソファにのけ反り、重ねられた食器を指しそう言う男性。一瞬あたりを見回しキョロキョロしたけど、視線は頑なに私に向けられていて、わけがわからず目をぱちくりさせた。

確かこの人は営業一課の生野係長。よく接待費や交通費の払い戻しで経理課にくるけど、態度が横柄でよく覚えている。レシートを投げるように渡してきたり、早くしろ! とイライラした様子で急かしてきたり。あまり良い印象がない。

「あー、それとさ。生ビール、大至急ね」

さらにそんなことを言いだすものだから、「あ、はい」と曖昧に返事をした。どうしてそんなこと私に言うの? いったいどういうこと?


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