独占欲強めな同期の極甘な求愛
「生野係長~。なに言ってるんですか~」
すると少し離れたところから、クスクスと笑ながらそう言う江頭さんの声が聞こえてきた。
「その人、経理課の白鳥さんですよ。絶対店員さんと間違ってるでしょー」
江頭さんの言葉にハッとした。店員さん? あ、そうか。私が膝をついてムキになってこんなことをしていたから、店員さんと間違えられていたんだ。
「え? 経理課の白鳥? あーそういえば見覚えがあるようなないような」
面倒くさそうに私を下からなぞるように見る。会社では何度も接しているのに、その物言いにムッとする。きっと経理課に来るときは、私の顔なんて見ていないんだろう。
「最初からずっといらっしゃるじゃないですかー。いくら地味な恰好しているからって、店員さんと間違えるなんてあんまりですよ、生野係長」
バカにしたような江頭さんの言い草に、わっと笑いが起こる。恥ずかしくてカァーッと顔に熱が集まって、私はただおしぼりをギュッと握ったまま俯いていた。
「あんな子、会社にいたっけ?」
「さぁ、俺は知らないなぁ。誰があんなの誘ったんだよ」
男性社員がひそひそと話すのが聞こえる。きっと臣も私の存在に気が付いたはず。最悪だ。こんなみじめな姿見られたくなかった。やっぱり私にはこんなところ、場違いだったんだ。
私はたまらずその場におしぼりを放り出すと、逃げるようにその場を後にした。