恋は思案の外



――ピピッ、ピピッ。




「おっと時間だ。」

「は?」




某ヒーローが宇宙へ帰るときよろしく、突然鳴り出した電子音。

同時に手首をぱっと離されたかと思えば、ヒト科が身に着けているゴツい黒の腕時計をいじる。



「じゃあな、いろは。俺はもう行かなければならない」

「誰だよ」

「必ず優勝してみせる。結婚しよう。」

「ねぇわたしもう疲れた」



ツッコミが追いつかず、はあああと深い溜息を吐くことしかできないわたしの頭に一度だけ、ぽんっと大きな掌をのせた男はいそいそとチャリに跨った。


そういえばコイツ、チャリに乗ってたんだったよ……。



「目指せ優勝。」



そしてぐっと親指を突き立てて、爽快に田舎町に溶け込んで行った。






「………とりあえず、」




見えなくなった背中に、一言だけ言わせてもらう。





「もし優勝してもチャリだからルール違反で棄権ね。」












――その数十分後。


ゴール付近でスタッフと揉める男の目撃情報があったとか。








  決められたルールは守りましょう
 (ヒト科の精神年齢、小学生以下。)




        * imu



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