「夕暮れのノスタルジー」〜涙の落ちる速度は〜
自転車を停めた傍らには形ばかりの鳥居があって、その横にある大きな石の上に、

「疲れたー」

言って彼女が座り、「隣、いいよ」と、場所を空けた。

「ありがとう…」

少しだけ離れて腰を下ろした。

何か喋らなくてはと思いながら話し出す糸口を見つけられず、手持ち無沙汰にふと空を見上げると、気の早い一番星が見えていた。

「あ、一番星…」

口に出すと、

「…ほんとだ」

と、彼女も空を眺めた。

「……ねぇ、こう君は高校どうするか、もう決めた?」

「……高校? 僕はまだ決めてないけど、たぶん地元の高校に行くかな」

何気なく答えると、

「そっか、」

頷いて、ミキちゃんが、

「私は、東京の高校に行こうと思ってるんだ」

と、話した。

「……東京の高校に。そうなんだ……」

「…うん、私ずっと東京に行きたくて、親も高校に受かったら一人暮らしさせてくれるって言ってるし」

「そうなんだ……」

同じ言葉を繰り返す。


< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop