「夕暮れのノスタルジー」〜涙の落ちる速度は〜
……ミキちゃんは念願通りに高校に合格して、東京へ出て行った。

僕はたいした希望もなく地元の高校に入って、そのままエスカレーター式に大学へ上がった。

彼女は大学も東京に行き、地元に帰ってくるようなことはほとんどなくなった。

たまに帰省しても一泊ぐらいで戻ってしまい、会う機会などもなく数年が過ぎ去ったーー。


ーーやがて大学を卒業した僕は、東京へ出ることを決めた。

東京で就職したという彼女にもしかしたらまた会えるかもしれないという、ただそれだけの淡い期待を抱いて……。

だけど都会の広さを知らずにやみくもに飛び込んだだけで、簡単に再会などできるはずもなく、僕は適当な仕事に就いて日々に忙殺された。

灯りの消えた侘しい一人暮らしの部屋に帰る度に、思い出されるのは彼女のことだった。

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