元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
そこまで聞いて私はハッとし、たまらず嫌悪に顔を歪めた。
この時代、カトリックの聖職者は結婚を禁じられている。ほとんどの人は真面目に神に仕え清らかに生きているのだけれど、大きな権力を持った一部の聖職者には修道見習いの少年に性愛を抱く不届きな輩がいるのだ。いわゆる、酒池肉林に飽和した権力者の最低な娯楽とでも言おうか。
彼らは少年の華奢で儚い美しさを好む。けれど少年が成長して逞しい男性に育っていくのを忌避し、中性的な少女に男の格好をさせて長く少年愛を楽しむ者もいるのだとか。
「……最っ低……」
すさまじい嫌悪から、思わず呟きが出た。
もちろんクレメンス様がそんな理由で私に男装させていた訳ではないことは分かっている。けれど、そういった趣向の下衆な人達のご機嫌を取るために、そんな最低な理由をつけなくてはいけないことには吐き気さえ催してくる。
「私もあまり好ましくない手段だとは思うがね。効果は抜群だったよ。私を敵視していた教皇大使があんなに馴れ馴れしくなったのは滑稽だった」
ククッと零す笑いは皮肉に満ちていて、クレメンス様もそんな人達のご機嫌取りが本意ではないことが感じられた。
駆け引きだらけのこの世界で味方を増やしていくというのは簡単なことではない。そんな当たり前のことを改めて痛感せずにはいられなかった。
「みっつ目は……」
クレメンス様はそう言いかけると、視線を一瞬彷徨わせてから口をつぐんだ。