元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「……我が国もギリシャにつくべきだと僕は思います。ウィーン体制は確かに大事ですが、形骸化してしまっては意味がありません。ギリシャに手を差し伸べたいという各国の想いこそが、ヨーロッパの結びつきを強くするのではないでしょうか。そしてギリシャが独立を果たした暁には、我がハプスブルク家の者を国王の座に据えることで欧州のパワーバランスの均衡を図るべきです」

ヴェローナ会議の最重要課題であるギリシャ独立問題については、もちろん事前に電子辞書で調べてある。

このあと結局イギリス・フランス・ロシアはギリシャ支援につき、ギリシャは八年後に独立を果たす。いつまでも煮え切らずどっちつかずだったオーストリアは完全に蚊帳の外になってしまうのだ。

だったらウィーン体制にこだわらず先手を打つべきだという考えは、未来をカンニングしているみたいでちょっと狡いだろうか。

私の意見を聞いて、クレメンス様もカッスルリー外相もゲンツさんも零れそうなほど大きく目を見開いた。

そして沈黙のあと弾けるように笑い出したのは、なんとクレメンス様だった。
 
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