元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「驚いたよ、ツグミ。ウィーンに来て半年のきみがそんな立派な考えを持つようになっていたとはね」

もしかしてウィーン体制を否定するようなことを言って怒らせてしまっただろうかと、内心ハラハラする。

クレメンス様は少し押し黙って何かを考えると「参考にさせてもらおう」と言い残し、カッスルリー外相をつれてホールの外へと出ていってしまった。

「ぼ、僕、生意気なこと言ってしまいましたかね……?」

冷や汗をかきながらゲンツさんの方を振り向くと、彼はまだポカンと驚いた表情をしていたままだった。

「いや……メッテルニヒは率直なお前の意見が聞きたかったんだから構わねえよ。けどなあ……形骸化かあ。メッテルニヒも痛いところを突かれただろうな」

感心したように言ってから、ゲンツさんはククッと肩を竦め苦笑いをしてみせた。そして周囲を見回してから声を潜めて言う。

「ウィーン体制はまさにメッテルニヒが要となって推し進めてきた政策だ。あいつとしてもイタリアの革命は徹底的に弾圧したのにギリシャは許すなんて簡単には言えない立場なんだよ。けどトルコの味方につく訳にもいかねえし、せっかく会議を開いても結局立ち位置がはっきりせずモヤモヤしてたみてえだな」
 
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