敵国騎士と命懸けの恋
「病人は早く寝ろ」
ベッドから降りてきたと思えば、颯真は私を見下ろした。
「貴方は騎士でしたのね」
「下級だがな」
ふんわりと身体が浮く。
え…
颯真に抱きかかえられ、ベッドまで運んでもらった。
下ろす時はゆっくりと。
「優しくしなくても良いわよ。どうせ殺されるんでしょう」
「……」
軽々と私を持ち上げた鍛えられた身体に巻かれた包帯を見つめる。
「でも、貴方も怪我をしているのに、運んで頂きありがとうございます」
過保護な騎士は布団をかけてくれた。
「傷口、開いたりしてない?私、結構重いでしょう」
「俺のことはいい。自分のことを考えろ」
「…今の傷を負った貴方なら、私でも逃げられるのかしら」
向き合った貴方は、無表情で冷たい印象を受けたけれど。あのヘラヘラとした国王とは違い、少しも怖いとは思わなかった。