敵国騎士と命懸けの恋
声が出せない。
どうしてか舌も痺れてきた。
無言で、メイドを見る。
そしてハッとした。
口元に称えられた卑しい笑みと、狂気のこもった目。私のよく知る人間の表情だ。
颯真さん!
そう叫びたいのに、声が出ない。
スプーンを持つ手が震えて、ベッドに落下した。しかし柔らかい布団の上に落ちたところで大した音はせず、颯真は気付かない。
あろうことか書物に視線を向けたまま、颯真はスプーンを手にとった。
それを飲んじゃダメ!
全身の力を振り絞り、勢いよくベッドから降りる。
ーーよし、届く。
崩れるように颯真のベッドまで走り、サイドテーブルに置かれたお皿を腕で払い落とした。
「おまっ!なにしてる?」
中の液体が腕にかかるが、熱いとは感じなかった。
やっと颯真がこちらを見てくれた時には、私は固い床に倒れ込んでいた。